日本とベトナムをITで繋ぎ
両国の発展の架け橋となる
グエン・ティ・ビック・ハー さん
オー・シー・ジー・テクノロジー/
ビジネスデベロップメント・
シニアマネージャー兼CEO補佐

前川 貴則(まえがわ たかのり)

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)のグループ関連会社である「オー・シー・ジー・テクノロジー/OCG Technology(OCG)」で、前川貴則さんは現地エンジニアの技術を生かしたソフトウェア開発事業を推進している。見据えるは、両国が抱える様々な課題解決。日越の未来をつなぐ同社事業に長年携わってきた前川さんのベトナムへの想いとは。

思いがけないベトナムとの再会
密なコミュニケーションで信頼関係を構築

「2023年から始まる今回の出向は2度目の赴任となります。しかし、実は1回目である2017年のさらに前、2014年に旅行でベトナムを訪れたことがあるんです。自分では忘れてしまっていたのですが、その時に『この国で生活し、この国の発展の為に貢献したい』と一緒に旅行をしていた友人に話していたようで。そこからわずか3年後に赴任、さらに今回2度目の駐在となり、驚きました」
将来、自分が関わることになるなど想像もしていなかったベトナム。しかし、道行く無数のバイクや街や人の活気を前に、活き活きと目を輝かせていた。そんな彼のベトナムでのミッションは、NTT東日本のソフトウェア内製プロジェクトチームの立ち上げとノウハウの蓄積や人材の輩出。加えてオフショア拠点の立ち上げや体制拡充の促進と、どれも現地ベトナム人エンジニアと深く関わる内容で、慣習の違いに戸惑うことも多かった。
「オフショア開発には当然ながらセキュリティの担保が必須です。機密情報や個人情報の管理もシビアに求められます。しかし、当時は部署のドアが開け放たれていたり、重要書類が机の上に放置されていたり。セキュリティの意識の違いに驚かされました。改善を促すものの、こちらの方が便利などの反論も多く、情報共有のための報連相が徹底されないことも多々ありました」
同じ社内で働いていても、日本から来た外国人の意見にすぎないと、どこか他人事のように思われていたのかもしれないと振り返る前川さん。そこで終業後の飲み会やチームビルディング、社内で開講した日本語クラスでは先生役になるなど、コミュニケーションを密にとることで、徐々に信頼を得ていった。
「逆に、ベトナムのことは社内のベトナム人の先輩から教えてもらいました。日々の食事からベトナムの文化、商習慣まで、朝から晩まで公私問わず付き添い教えていただいたおかげで知識も深まり今、現地での仕事ができる自信になったと感謝しています」

 

 

貪欲に吸収し果敢に挑戦
ベトナムの人々の姿に人生の大切さを学ぶ

ベトナムでの駐在経験とソフトウェア開発、情報セキュリティ業務の知見を買われ、2度目の赴任に抜擢された前川さん。現在は社内の体制も日本と遜色ないレベルで整い、頼れるメンバーも増えてきた。
「ITの世界では新しい技術が次々と生まれ変化しています。その点、ベトナムのIT開発者は20歳代前半から半ば程度と若く、勤務後に学校に通う人も多い。新しいものを積極的に取り込む彼らの姿勢には、本当に刺激を受けています」
果敢にチャレンジするベトナムの人々の姿に、人生をワクワクしながら生きる大切さを学んだという前川さん。日本では日々の仕事に忙殺され、「何のために仕事をしているのか」と悩むこともあったが、今では何事もポジティブに捉えられるようになったと話す。
「目の前のことだけでなく、この先に何があり、それらが会社や社会にどのようにつながるのか。ひいては自分自身がどのように成長できるのか。ポジティブになることで発想や視野の広がりも持てた気がします」

ローコード開発の強みを活かし
経済発展や生活の向上を目指す

通信インフラが当たり前になった昨今、NTT東日本では更なる価値を生み出すべく、新たな指針として「ソーシャルイノベーション企業」を目指している。そのカギとなるのがITを用いた顧客の要望や問題の解決。そこで「OCG」ではローコードを中心とした開発に注力している。
「イチからオリジナルのシステムを作るスクラッチ開発に比べ、ローコード開発では既存の多様なパーツを組み合わせることで開発期間の短縮やコスト削減が可能となります。DXの推進にも有用ですが、ベトナムでローコードを中心に開発を行う企業はまだ数社程度。そこで、今後はその強みをより生かせられればと考えています」
現在は日本の需要に基づいた開発業務が主だが、将来的に自社でプロダクトを作り、日本やベトナムへのサービス提供も視野に入れている。
「ソフトウェアの開発を通じてベトナムの経済発展や生活の向上にも貢献していきたい。日本からベトナムというだけでなく、ベトナムから日本へプロダクトやサービスを提供する流れがあってもいい。その中で私個人としても、双方の知見を活かしノウハウを伝えたり、企画や業務の推進に携わることで、日越の架け橋になれればと思っています」

 

1984年三重県生まれ。「NTT東日本」にてソフトウェア開発や情報セキュリティ業務に従事。2017年と2023年の2度に渡り在ハノイの「OCG」社に出向し、同社ソフトウェア開発事業の整備に携わる。ベトナムの教育環境改善やソフトウェア開発拠点立ち上げ、今後のICT関連事業推進・拡大に向けた活躍が評価・期待され、2020年にはITUジャパンの国際協力奨励賞を受賞した。

 

取材・文/杉田憲昭(Grafica Co.,Ltd.)
ベトナム語翻訳/Lưu Bích Dung
編集/Sketch Co.,Ltd.