地方から始めるベトナム開発
日越が共に手を取り合う未来を夢見て
グエン・ティ・ビック・ハー さん
ニイヌマベトナム・ニイヌマともファーム/代表取締役

箕輪 佑耶(みのわ ゆうや)

ベトナム北部の農村では、約15万世帯が未だ電気のない生活を送っている。そこで、LED照明や蓄電池などの開発・製造・販売を行う「ニイヌマベトナム」では、日越の公官庁と共に電力供給がない地域での環境インフラの整備に取り組んでいる。街や国が抱える課題解決に力を注ぐ代表取締役の箕輪佑耶さんに、ベトナムとの関わりを聞いた。

ベトナムのビジネスは人間関係
助け助けられ、ベトナム好きに

ニイヌマ株式会社の海外事業の一環として、箕輪さんがベトナムへ赴任したのは2019年のこと。日系企業の増加や街の発展、市場拡大に伴うLED照明の需要を見込んでの進出だった。折しも当時、ベトナム政府も新たな照明の導入を計画していた。既存企業の製品では品質の向上が見込めないと、ニイヌマベトナムの製品が採用された。しかし、当初は現地政府や企業との関係作りに苦心した。
「ベトナムでのビジネスは、まず人間関係作りが大切です。しかもみんな、お酒が好き。一緒にお酒を飲み、心を砕いて仲良くなることで、次の何かに繋がることが多くあります。ところが、私はもともとお酒が強くなく、当時は飲み会に出ることが本当に苦手でした」
しかし、いざ飲み交わしてみると、関係が深まっていくのを実感した。ベトナム語が堪能でないにもかかわらず、積極的にコミュニケーションを図った。飲み会の数が増えるにつれ、友人の数も増えた。
「何かの問題について助けてほしいとお願いされることもあれば、助けられることも多い。例えばこういうことがしたいと話していると、伝手を頼って人を紹介してくれたりもします。次第にそんな生活を楽しく感じるようになり、ベトナム人に対する向き合い方も変わりました。今ではもう、1度会った人とは2度目は飲みに行くというルールを自分に課しています(笑)」
ニイヌマベトナムでは現在、イエンバイ省やトゥエンクアン省、ディエンビエン省などの農村や山岳地域で、JICAや日本国大使館の支援を受け、照明の設置や電力供給システム構築の公共事業を行っている。日本人があまり訪れない地域だけに、来訪すると熱烈な歓迎を受けることも多い。
「もちろん物やサービスの質は大事ですが、お互いに信頼できる人とお酒を飲み、一緒に仕事をしたいという気持ちを強く感じます。だからこそ、心を開くために私ができることは全てしたい。弊社は大手ではなく中小企業。地方から一緒に成長していければと思っているんです」

 

 

電気も農業も全部やる
“自分事”としての地方開発

照明・電力と並び、箕輪さんはベトナムの農業にも注目している。照明などのプロジェクト先は遠隔地の農村が多く、そこに住む人々の生活向上には、農業自体の向上が欠かせないからだ。
「ベトナムの人口の約6割が農業で生計を立てています。しかし、その生活は決して楽ではない。そこで『ニイヌマともファーム』を立ち上げ、中部コントゥム省とイエンバイ省で、農業を始めました。品質の良い作物を作り、高い価値をつけて販売する。農業を続けながら所得向上が可能なビジネスモデルをまず作り、ベトナムの各地へ拡散していければと思っているんです」
ソーラーパネルや蓄電池を利用して、太陽光だけで電力をまかなう農園も作る予定だ。
「ハノイなどの大都市でできることは既に大手企業がやっています。だからこそ、私たちは地方発で全国に広げられる事例を作っていきたい。地方開発に特化した企業と言ってもよいかも知れませんね」
電力や農業にかかわらず、開発途上のベトナムには様々な問題が存在する。赴任当初は数年で帰国するだろうと他人事に思っていたが、関係が深まるにつれ、考えにも変化が起きた。
「いつの間にか他人事ではなくなってきました。問題を見つけると、『なぜ?』『どうしたら良い?』と考えるようになりました。ベトナムの人が好きで、この国の成長をもっと見てみたい。将来を本当に楽しみに感じています」

 

日越の若い力を集結
U40世代が作る次の50年

ベトナムが抱える課題解決への貢献の傍ら、箕輪さんは現地日本人コミュニティの発展にも力を注ぐ。ベトナム日本商工会議所(JCCI)の理事を務めるほか、日越外交関係樹立50周年日本側実行委員会の事務局員、ハノイに住む若手在住日本人の取りまとめなども行っている。
「2023年は日越関係の大きな節目。日本人とベトナム人がチームを組んで走る50周年認定事業の「JCCI日越駅伝」にも深く関わらせていただき、日本からランナーを呼びランニングの楽しさをベトナムへ伝える活動なども行っています。しかし、私が注目したいのは過去の50年ではなく、これからの50年。弊社も今後、ベトナムの地に根差し100年、200年と続く会社を目指していますので、この先が楽しみなんです」
だからこそ、日越関係の発展には、若い日本人の力、ベトナム人の力が不可欠と話す。
「U40の人々が次の60周年、70周年の時に、ベトナムの案件を更に盛り上げて行くのが夢なんです。ベトナムの人々も交え、共に今後をどうするか、未来を語り合えるような場や枠組みを作っていきたい。そこから両国の関係がより発展していければと思っています」

1988年埼玉県生まれ。大学生時に東日本大震災のボランティアへ参加。その後、政治家秘書などを経てニイヌマ株式会社に入社。生産管理・輸出入管理を担当する傍ら、海外事業担当も兼務する。2019年のニイヌマベトナム設立を機にベトナムへ赴任。ベトナム日本商工会議所(JCCI)理事も務める。

 

取材・文/杉田憲昭(Grafica Co.,Ltd.)
ベトナム語翻訳/Lưu Bích Dung
編集/Sketch Co.,Ltd.