日本の教育で学んだ価値観を生かして
日本水準のサービスを提供したい
グエン・ティ・ビック・ハー さん
エイチビーラボ/代表取締役、キディハブ/会長

グエン・フイ・タン

日本市場向けのオフショアサービスを提供する「エイチビーラボ/HBLAB」の代表であり、ベトナムの幼稚園に日本の教育プログラムを導入する「キディハブ/KiddiHub」」の会長も務めるグエン・フイ・タンさん。日本留学で学んだ日本独特の考え方や精神で、情報技術と教育分野において日越の橋渡しを行う。

日本で学んだ問題解決思考で
会社を成長に導く

ハノイ工科大学在学中に、高い学業成績を収め、慶應義塾大学の環境情報学部に留学する奨学金を得たタンさん。これが日本との運命的な出会いとなった。
「私が入学した環境情報学部では、情報技術の研修があります。学部名に『環境』と付いているのは、情報技術を使って環境問題の解決を目指すためだと教授から説明を受けました。大雑把に言えば、技術とは人生の問題を解決すること。日本で教えられた、この問題解決型の思考に強く惹かれるようになりました」
卒業後に日本で就職したタンさんは、その時勤めていた日本企業の人材不足を解決しようと、ハノイ工科大学の仲間とともに、日本向けのオフショア開発会社「エイチビーラボ」を設立した。
「私は技術者として勉強をしてきたので、本来はロジカルでドライなタイプです。ただ日本での留学や勤務経験から、人間関係や信頼を築くためには、一生懸命働くだけでなく、なぜお客様が当社のサービスを必要としているのか、どうすればお客様の目標達成に貢献できるのかを把握する必要があることを理解しました」
「エイチビーラボ」の経営理念は、利益を追求することではなく、お客様の問題を解決することだと常に考えているタンさん。
「試行錯誤を繰り返す中で、ベトナム側と日本の顧客には、品質に対する評価に差があることに気づきました。この差を埋めるために、日本標準のプロセスや品質を基に、常に改善を行っています。顧客のニーズをよく調べて、そこに適した対応に注力するのです。例えば、日本市場ではデジタルトランスフォーメーションの需要が大きいので、現在はこの分野にリソースを集中させています」

 

 

会社が危機に直面
助けてくれたのは日本人

「エイチビーラボ」には現在、ベトナム本社と日本支社を合わせて400人以上の従業員を抱えるまでに成長した。ウェブシステムやスマートフォンアプリ、デジタルトランスフォーメーションなどの開発だけでなく、人工知能の分野にも強みをもつ。日系小売企業やスタートアップ企業などを顧客として、画像認識などのサービスを提供している。
「コロナ禍や円安の困難な時期に、日本のお客様は当社を離れることなく、たくさん応援してくださいました。そのおかげで、人員整理をすることなく、困難を乗り切ることができました。また、東京オフィスの開設など、ジェトロにも設立当初から多くの重要な支援をいただきました。これらの支援があったからこそ、私は常に日本の『おもてなし』と『こだわり』の精神を仕事に生かし、お客様に寄り添い、社会にとって良い価値を生み出せていると思います」


日本の教育プログラムを
ベトナムの子どもたちへ提供

IT分野で活躍しつつも教育へも強い関心をもつタンさんは、2020年に「教育」と「技術」を組み合わせたエドテックの会社「キディハブ」を設立した。ジェトロからの紹介を得て、キディハブは学研ホールディングスと2021年11月25日にファム・ミン・チン(Pham Minh Chinh)首相の立会いのもと、日本での協力に関する覚書に調印した。
これにより「キディハブ」は、かざぐるまを作る実験などの科学教室や、食材の分類わけなど身近な活動を通したプログラミング教室など、「学研ホールディングス」のSTEAM教育プログラムをベトナムの幼稚園に提供している。
「将来的には、ベトナムの子どもたちが日本の教育の真髄である問題解決思考に近づけるよう、質の高い日本の教育プログラムをベトナムにたくさん紹介していきたいと思っています」


2007年ハノイ工科大学入学。在学中の2010年にHEDSPI(Higher Education Development Support Project on ICT)プロジェクトの奨学生として慶應義塾大学の環境情報学部に留学。2015年に日本向けのオフショア開発を行う「エイチビーラボ/HBLAB」設立。2020年6月にはエドテック会社「キディハブ/KiddiHub」を設立し、ベトナムの子どもたちに日本のSTEAM教育プログラムを提供している。

 

取材・文/Sketch Co., Ltd.