インフルエンサーになった青年海外協力隊員
ベトナムと共に日本の地方を元気にしたい
グエン・ティ・ビック・ハー さん
国際協力機構(JICA)青年海外協力隊「番組制作」ベトナム隊員

山本 岳人(やまもと たけひと)

ベトナムテレビ外国語放送局(VTV4)の日本語放送番組『ジャパンリンク/Japan Link』で、番組の制作サポートを行う山本岳人さん。広報の一環として始めたティックトック(TikTok)動画が話題を呼び、今やフォロワー数50万人を超える人気インフルエンサーとなった。

日本の地域活性化を目指し
青年海外協力隊員の道へ

地元である石川県のテレビ局に入局し、過疎化や産業の衰退など、地方都市が抱える諸問題に触れてきた山本さん。地域の活性化には国内だけでなく、海外との繫がりも必要と感じるようになった。そんな折、偶然見つけた国際協力機構(JICA)海外協力隊員の募集に運命を感じ応募。テレビ局を休職し20219月、ベトナムの地を踏んだ。

「石川県の在住外国人の中で最も多いのがベトナムの人々なんです。そこで赴任するならこの国と最初から決め、2度目の受験で念願のベトナムにやってくることができました」

海外での暮らしや仕事は初めてだったが、勤務先がテレビ局ということもあり日常業務に支障は感じなかった。主な仕事は現地スタッフが翻訳した原稿を、ネイティブとして自然な日本語にすること。しかし、着任から2ヶ月ほど経た時、新たな課題に気がついた。

「外国語放送ということもあり、そもそも番組自体の認知度が低い。そこで広報業務を主軸に活動することにしました。ただ、『番組を見てください』と伝えるだけでは視聴者に何も届かない。まず私のファンになってもらおうと、ありのままの生活をティックトックやユーチューブ(YouTube)、ブログで配信することから始めました」

街を散策したり、美味しそうにベトナム料理を食べたり。内容は現地の生活を心から楽しむ山本さんの日常だけ。ところが自国に好意を持つ外国人の姿に多くの若者が飛びついた。今では街を歩けば道行くベトナムの人々から声をかけてもらえるようにもなった。

「視聴率のような具体的な指標がないため、実態調査はできていませんが、ティックトックでの番組紹介は平均で20万回以上再生されています」 

 

 

メディア人からメディアへ
社会に役立てる喜びを実感

日本にいた時はブログでの配信もほとんどしたことがなかった。しかし、ベトナムでの活動は、山本さんに新たな自信をもたらしてくれた。

「ティックトックでの配信自体、赴任前の私では考えられませんでした。テレビ業界で働くメディア人ではありましたが、それはまず媒体があればこその話。ところが今は私自身をひとつのメディアとして見てくれる人がいます。日越というキーワードの中で、一個人として社会に何か影響を与えられるようになったことは、ベトナムでの一番大きな変化でした」

彼の元には毎日のように問い合わせが相次ぐ。商品やサービス、採用に関する宣伝活動などの企業案件のほか、ベトナムの学校から学生との交流依頼が来ることもある。

「青年海外協力隊員という立場上、今は企業への支援は難しいのですが、頼られること自体に喜びを感じています。番組の同僚をはじめ、この国の人々に存在を受け入れてもらえた。そのことが何より嬉しいですね」

 

日越がタッグを組み
Win-Win
となる関係へ

ベトナムでの任期は2023年の9月に終了する。任期内は任務の遂行に徹し、番組の改善に引き続き全力投球していく。帰国後は偶然生まれたインフルエンサー業務や培った人脈を活かし、ベトナムと日本を繋ぐ活動に力を注ぐ予定だ。

「観光や製造、医療、介護など、様々な枠組みでベトナムと地方自治体を結び、地域の活性化に取り組んでいきます」

両国の未来を見据えると、日本とベトナムが互いに協力・貢献しあえる事柄は数多いという山本さん。

「ベトナムは2050年までに先進国と並ぶことを目標に掲げており、着実に力をつけています。一方、これまで培ってきたノウハウなど、日本から提供できる要素も多い。観光・文化などでは地方ならではの魅力や価値もたくさんあるので、それら全てを強みにしてオールジャパンとベトナム、双方がWin-Winになれるような関係作りに携われればと思っています」

 

1982年石川県生まれ。石川テレビに入局し報道記者として従事。2018年にはディレクターとして参加した「南京の日本人」がFNSドキュメンタリー大賞優秀賞を受賞。2021年から同局を休職し、青年海外協力隊に参加。2021年にベトナムテレビ外国語放送局に着任し、日本語情報番組「ジャパンリンク」の制作に携わる。

 

取材・文/杉田憲昭(Grafica Co.,Ltd.)
ベトナム語翻訳/Lưu Bích Dung
編集/Sketch Co.,Ltd.